テレビ東京の「アド街ック天国」で上井草の街が取り上げられ、放映されてから早１ヶ月が過ぎた。
カリーナもその中に登場させていただいたが、その影響に少なからぬ驚きを受けている。

テレビ放映は、以前にもＪ：ＣＯＭのテレビではあったが、やはり上井草の店を紹介した３店の中に取り上げていただいて、常連のお客様から「テレビ見ましたよ！」と声をかけられたり、かなり遠くからわざわざ足を運んでくれた人もいて、テレビの影響にはその時にも少しびっくりさせられた。

「出没、アド街ック天国」の取材依頼の電話が入ったのは、確か１月下旬だったように思う。
大変申し訳ないことではあったが、正直なところ「アド街」は一度も見たことがなかったし、どんな番組かも全く知らなかった。
なにせ３時前には起きて仕事に出かけなければならない私たちにとって、睡眠時間を考えると９時からの番組は見たくても見てはいけない時間帯になる。
少しでも宣伝効果にでもなれば・・・・と軽い気持ちで依頼を引き受けたものの、その後に録画して見た「アド街」に紹介される立派な店を見て気おくれがしてしまった。

しかし依頼を受けた以上尻込みしていてもはじまらない。
「プロが作るものなんだから何とか見られるようにしてくれるんだろう…」
腹をくくって取材、ビデオ撮りに応じていった。

そして放映当日、翌日のお客様に対する対応のためにも、もちろんリアルタイムで観た。
いろいろな場面をビデオに収めていったが、放映された場面はその一部をサラッと簡潔にまとめてあった。
正直なところ「これだけ？」という物足りなさも少しはあったが、それ以上に貧弱な店の紹介をぼろも出さずにまとめてくれたことにホッとした。

取材を受けた後に得た情報によると「放映後１ヶ月ぐらいはすごく忙しくなる」とのことだったが、翌日の日曜日は雨で、雨の日は普通だと客足はぐっと遠のく。
それにちょっぴりの紹介だったし、それほどの忙しさにはならないだろう・・・・
それでもいつもの仕込みよりは多く準備をして店を開けたのだが、開店の６時はともかく、７時を過ぎてからはお客様の足が絶えない。
無我夢中でつくり続け、１１時にはすべての材料を使い果たしてしまった。
それから閉店時間の午後２時までの３時間、せっかく来店してくれたお客様に、ただただ頭を下げるだけが仕事になってしまい、特に常連のお客様にはとんだ迷惑をかける結果になってしまった。
この場をお借りしてお詫びをさせていただきたい。

「アド街」を見て訪れてくれた方には様々な人がいる。
都心や埼玉、神奈川、千葉からやってきた人や、さらに遠く岐阜や四国からやってきた人（もちろん他の用事があってのことなのだろうが）など、とても考えられない事実がある。
わりと多く見受けられたのが「アド街」ツアーとでも言っていいのだろうか、紹介された店のメモを片手にお祭り気分で訪ね歩いている人で、かなりの人にその場所を聞かれたが、そんな人たちはカリーナの“完売品切れ”の札を見ても「やっぱりな・・・・」という顔で笑って許してくれた。

朝早く名古屋から深夜バスでやってきたという奥さんは、テレビを見て「私もサンドイッチの店をやってみたいので教えてもらえないだろうか？」と訪ねてきた。
今までに商売の経験もない様子でもあり、あまりにも安易な思いつきに感じたので
「作り方など店のホームページにも載せてあるので隠すつもりはありませんが、個人の商売なんて見た目よりは大変なことばかりで、よほど腰を据えてかからなければ挫折してしまう人が多いんですよ、新たに店を開くとなればどんなに抑えてもかなりの資金を使うことになりますし、それを短期間になくしてしまうことにもなりかねませんのでお勧めはできませんね」と、丁寧にお断りした。

上井草の「アド街」にいっしょに紹介された店の方も買いに来てくれた。
「やはり忙しそうですね、うちの店もそうなんですよ、がんばってくださいね！」
その言葉には同志に対するようなあたたかさがあって、忙しさに張りつめていた気持ちに潤いを与えてくれた。
うれしいことであった。

それから今日まで、放映直後の忙しさほどではないが、依然として放映前より忙しい日々が続いている。
これはもちろんカリーナだけの現象ではなく、紹介されたそれぞれの店が同じような状態で、焼き肉屋さんなどはいまだに開店時間前から行列ができるようだ。
ここ２,３年の経済の落ち込みに加え、大手チェーン店や大型店の安売り攻勢に、流通機構からの仕入れに大きな差のある個人商店は対応しきれずにどの店も苦しんでいるが、個人的には「アド街」のおかげでたとえ一時的なものであったにせよ助けられたようだ。

この「一時的」なお客さまもみんなが遠方から来たわけではない。
「アド街」によってはじめて店の存在を知った近所の方々ももちろん多くいるはずだ。
この知っていただいた大切なお客様をリピーターとして獲得できるかどうかはその個々の店の努力にかかっている。
カリーナも、その味と、心からの応対で応えていくつもりでいる。

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