（45）雨の墓参

３月６日
都合のつかなくなったかみさんを残して
降りしきる雨の墓地にひとりたたずむ

墓前にはすでに花が添えられていた
おなじ想いをもってすでに訪れた人がいたことがうれしかった
これからも訪れる人がもちろんいるだろう
友の生涯がそうさせているはずだから

「千の風になって」友は今この墓にはいないのかもしれない
いや
そうあってほしいとも思う
だがそんなことはどうでもいい
自分の気休めのために「やってきたぜ・・・」とつぶやく

一年前のこの日
壮絶な癌との戦いのすえ友は力つきた
そして５月１２日
友を支えつづけた奥さんも
まさにあとを追うように息をひきとった

己の信念を貫き通した二人の生涯
そのことに自身の偽りはなかったことは確かだが
どんな思いを抱いて旅立ったのか
もはや覗くことのできぬその心の底に想いを馳せ
傘を打つ雨音を聞く

平日の強い雨の日
広いこの墓地にも人影が見当たらない
決して信心深くはない私でも
こんな環境が考えさせるのだろう

秩父市街を見おろし武甲山を仰ぐこの墓地
降りしきる雨の中
見る人もなく梅が咲き誇っていた
雨粒を受けてなお凛と咲くその姿に
友を重ねて想うのは感傷的すぎるのだろうか

いつもはかみさんと二人で訪れるこの地だが
一人しんみりと訪ねるのもわるくはなかった
でも
世話になった奥さんの命日にはやはり二人で訪ねよう
そして二人で語りかけてみよう
「私たちはまだ元気だよ！」と

秩父の丘にある 公園墓地

咲き誇る梅

なお凛として

つぼみも力強い

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