九州小倉に住んでいる孫たちにとって、東京のジジババを訪ねることが毎年の恒例となっている。
特に、上の子が小学校に通うようになって以来、夏休み、正月休み、春休み以外はまともな時間が取れないので、中でもゆっくりと滞在できる夏休みは絶対に逃せない楽しみな期間なのだ。
この間、一ヶ月をまるまる過ごしていくこともめずらしくはなかった。
遠くに嫁いで行った娘の「親に孫の成長をじっくりと見せてあげたい・・・・」という想いはもちろん強くあるのだが、かけねなしに嬉々として訪ねてくる孫たちの想いの底には、娘の想いも投影されているようにも思える。
孫たちが滞在している一ヶ月間も、もちろんジジババは仕事を休むわけにはいかず、仕事が終わった後と定休日でのつきあいになる。
幸いにして、最近は１２時をまわれば息子に任せて仕事を離れられるので、それでも充分に接点は持てるのだが、日常生活での生活習慣に変更をよぎなくされるのが正直なところジジババのちょっとしたストレスにもなってくる。
「バーバ、明日は何時に帰ってくる？」
孫が寝る前の最後のお決まりのことばなのだが、バーバもしたたか、ジージより先に帰る自分の時間を少し差し引いて、スポーツクラブでチョッピリ時間をすごしストレスをためないようにうまく処理する。
そしてジージはバーバのアシストで時間をつくり、お互いにストレスをうまく処理する。
そんなジジババも、歳とともにその負担が感じられるようになってきたが、自然の摂理というか、よくしたもので、孫も大きくなり、おんぶやだっこなど肉体的な負担はもちろん、いろいろなことで手がかからなくなり、おまけに滞在するその期間も学校行事や友人とのつきあいでだいぶ短くなってきて、今年は三週間弱の期間になった。
しかしこの三週間弱は、楽しみにしていた孫たちにとってはすごく短いもののようで、来る何ヶ月も前からあれこれと楽しむための計画を練り、娘といっしょにその準備を進める。
西武園プール、サンシャイン水族館、美術館などのチケット類は娘がネットオークションで驚くほど安く手に入れてくる。
３年前からはじまり、これも恒例となった家族の写真を使った手づくりの「マイかるた大会」のかるたづくりもみんなで吟味しながらすすむ。
旅行はその行程も楽しみのひとつなのだが、行きはフェリー、帰りはブルートレインに決った。
「ゆうやけも、ひのでもきれい、フェリーのたび」 「たのしいね、想い出の高速ドライブ湾岸線」
孫を乗せたフェリーが日の出とともにやってきた・・・ 春休み、ジイジが道を間違えて湾岸線を大回り！
こうなるともう心は夏休みに飛んで、待ち遠しさがつのってくる。
腕のいい演出家によってつくられた夏休みの大舞台の幕開けだ！
店の定休日に合わせて孫たちはやってきた。
すこしゆとりをもって仕事のときよりは少し遅い４時ちょうどに迎えに出発し、フェリーの着く東京港桟橋に着いたときにはまだ暗く、もちろんフェリーの姿は見えない。
待つこと３０分、日の出とともにフェリーはやってきた。
わずか５ヶ月前の春休みに逢っているのだが、少しはにかみを見せながらバーバの胸に飛び込んでくるその孫の姿に成長を見る。
すでに船の上で旅気分を味わってきたようだ。
デッキからさえぎるもののない大海原を眺め、地球の丸いことを確認できた感動。夜には月と星の観察。日の出日の入りの美しさをあらためて心にとめる。
船での食事も孫たちにとってはまたしかり
客船とちがって自販機で自分の好きなものを選んで食べる粗末なものなのだが、それがまた魅力にもなりうれしい。
レインボーブリッジ、東京タワー、都庁ビル・・・・・
すいている首都高を、毎年のように見慣れた東京の景色をながめながら走るとすぐに家に着く。
仕事は休みだが、疲れもあろうかと、今日はどこにも出かけず家での遊びの計画らしい。
さっそく「マイかるた大会」がはじまった・・・・
「のんびりマンボウ」 「るんるん気分で帰れるわ、本日完売またどうぞ」
サンシャイン水族館の大きなマンボウ 孫が店に来たとき、たまたま完売で少し早じまい・・・
ジジババにとって、はじめて目にする今年のかるたでは勝負にならず完敗・・・
それならば去年のものなら少しは覚えているかもしれないと「2007年版」でチャレンジしたがこれも完敗！
ふだんから時々やっている孫たちと、おぼえの悪くなったジジババではしょせん勝負にならないのも無理はないことかもしれない。
このかるたは、娘の嫁ぎ先の実家「椎田版」と我が家用の「田無版」をつくり、お正月にはお父さんの実家で「椎田版」の大会を恒例にしているようだ。
連休には西武園のプールへ・・・
去年は奥多摩へキャンプに出かけたが、今年は天候もかんばしくなく、短い期間の滞在で体力的な無理を控えての選択だ。
市営のプールには仕事が終わった後にでも何度か連れて行ったのだが、波のプール、流れるプール、スリルのあるスライダーがある西武園プールは孫たちにとっては別格！
特に去年まで顔を水につけることもできなかった下の孫は、今年一年生になって水に潜ることを覚え、興味しんしんなのだ。
すいているうちにと早くに入園し、まずは波のプールへ
はじめ慎重だった下の孫もすぐに行動が大胆になり「さすがは男の子！」と思わせる
お母さんとおねえちゃんは下の子をジジババに任せて楽しみにしていたスライダーへ・・・・
身長制限のあるスライダーにはすべりたくとも下の孫は行けず、それでも３人で波のプールでぞんぶんに楽しむ
流れるプールでは、下の孫は背が立たないのではないかと思っていたが、つま先立ちすれば呼吸ができる・・・
これで一気に楽しみが倍加した！
浮き輪や人の手を借りなくても遊べるのは、下の孫にとって自尊心を傷つけられることなく自由に行動できることになり、満足感も膨らむ。
去年はお姉ちゃんがもっと泳いでいたかったのに「帰りたい！」と強く主張していたことがうそのように、唇を紫色に染め、ガタガタふるえながらも「もっと泳いでいく！！」と主張する下の孫を何とか説得して帰路についたのは、予定の時刻をとうに過ぎていた。
楽しかった分、目いっぱいの行動で疲れきったのだろう、帰りの車に乗るとすぐにぐっすりと眠ってしまった。
そのほかにサンシャイン水族館、ジブリの森美術館、杉並アニメーションミュージアムなどにも行ったが、なんといっても娘を含め孫たちを満足させたのがバーバがクジで引き当てた「フォーシーズンズホテル椿山荘」の一泊券。
当たったときには「東京のホテルに泊まったってねぇ〜・・・」と当惑気味だったのだが、娘に「あんたたちこっちに来たとき使う？・・・」と聞いてみると」「エ！ いいの！！」と大喜び・・・・
何でも総合的な評価で日本のトップクラスにランクされるホテルで、体験してみて価値のあることだし、子どもたちにも一流といわれるそのお客に対する応対を見せてあげたい！・・・・とのこと。
取り扱いに戸惑っていた私たちにとっては、そんなに喜んでもらえることにむしろ感謝の思いだった。
さまざまな想いを胸に、帰る日が来た。
手づくりかるたも、来てからの写真を使ってかなりの枚数が作り変えられ、最後の夜に最新バージョンでのかるた大会が開かれた。
この日はこのかるたの作り手である娘も本気で勝負に挑む
写真も言葉も、ほぼ一手に引き受けて作ったかるただから、孫たちもかなわない
何とかくいさがっていい勝負をしたうえの孫も素直に負けを認める・・・・
翌日、出張で東京に来たお父さんに見送られ、ブルートレインで帰っていった。
これからさらに何枚かのかるたが作り変えられ、「2008年版」の完成を携え、正月休みか春休みにまた挑戦者がやってくる・・・・
いつまで元気にこれを迎え撃つことができるのか？、少々の不安が頭をよぎる歳になってはきたが、あくまでも前向きに、プラス思考で進んでゆきたい。
それが何よりも自分にとって大切なことであり、子孝行になることなのだから・・・・