許せねえ！おやじのひとりごと（99）

許せねえ！

なに！？
平和憲法の９条を、今変えることには国民の抵抗が大きすぎるから、とりあえず憲法解釈を変えるだって？
それから「集団的自衛権」なんぞという「戦争」の二文字をオブラートに包んだような物騒な代物を
国民に目隠しをさせたまま飲み込ませようって魂胆かい！！
一銭五厘の赤紙一枚で、親子兄弟、嫁さんからも奪い去り、虫けら以下のあつかいで命を捨てさせられた俺たちのことを知った上での言葉とはとても思えねえ。

おめえたち
「万歳万歳」の日の丸の旗の波に奪い去られた息子の後ろ姿に
「生きて帰ってくるんだよ」の言葉を呑みこんで見送らなければならなかった母親の
打ち震える全身の小刻みなわななきが見えなかったのか

「おかあさん！」の惜別のひと言も許されず
「天皇陛下万歳！」と叫さけばされて散っていった俺たちの、奥歯のきしむ音を聴いたのか

1944年3月10日
焼夷弾の炎の下で炭になった俺たちの体から
チロチロと立ちのぼる青白い炎の色を見たのか

広島と長崎で
放射能で焼けただれた
指先から滴り落ちる俺たちの皮膚のねばりに触れてみたのか

砲弾で耕されたかのような故郷の大地、沖縄
味方のはずだった軍からも見放され、強要され
その愛しき大地のはてから絶望の末に身を投げさせられた子どもや女たちの怨念のうめき声を聴いたのか

“第九条　日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

うれしかった！
死んでも死にきれない悶々とした日々
救いどころのなかった俺たちみんなの死が、こんなに立派に生かされた
空っぽだった心の中にたった一つの宝、誇りが生まれた
「犬死じゃなかったんだ！」

おめえたち
死んでいった俺たちみんなの、たった一つのこの宝まで
奪い去ろうってのか！！

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